リアルな体験とバーチャルの先へ
- 園長コラム
- Vol.44
本園では、幼児期は将来のための準備期間ととらえて毎日を積み重ねています。特に、Vol.43でご紹介した「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」を子どもたちにいかに身につけてもらうかを日々研究中です。そして、ICT機器を使った活動も取り入れて工夫しています。ICT機器を幼児の活動の中心に置くべきではないと考えていますが、将来抵抗なく使いこなさなければならないツールであることは間違いありません。
子どもたちが何かを習得するためには、受動的ではなく能動的に、主体性をもって取り組める活動が最も効果的だと実感しています。そのため、さまざまな活動を子どもたちに提供する際は、題材が子どもの身近な事柄であることを大切なコンセプトにしています。身近な事柄であれば、子どもたちはすぐに興味を持ってくれるからです。年齢の特徴に合ったプログラムだけでなく、ちょっと難しい事柄を背伸びしてプログラムに入れ込むことも、子どもたちが簡単だと侮らずに、「やってみたい!」とやる気になるスイッチを押すことにつながります。 そんな考えのもと、本園で長年実施してきた「アゲハチョウの観察」を発展させた、おもしろい活動ができあがりました。アゲハチョウの観察では、一人一頭のアゲハチョウを卵や幼虫から責任をもって飼育します。 毎日餌やりをし、飼育ケースの掃除をして、日々成長する姿に一喜一憂します。そして、定期的に幼虫の変化を細かく観察し、その様子や感じたことを自分の言葉で書きとめていきます。
自然に子どもたちは「この幼虫はどうなるのだろうか?」と図鑑やiPadで調べるようになり、探求心が開花します。見る力・見比べる力も育まれます。いつしか幼虫が蛹に変化すると、それに驚くとともにそろそろこの子とお別れだということを意識しはじめます。蛹はいつ蝶になるのか、心配で心配でたまりません。週末には飼育ケースを持ち帰り、いつでも蛹を見守る生活。いよいよ蛹が黒く変色し、ムズムズ動きはじめると蝶への変身です。そして、蝶とのお別れのときです。涙しながら蝶を放つ子どもたち。心動くこの体験は、子どもたちにとって忘れることのできない、学ぶことの喜びを体感する大切な活動のひとつとなります。
ここから、リアルな体験からバーチャルな体験にスイッチします。今度はグループ活動で「こんな蝶がいたらいいな」をテーマに話し合い、作品作りに取り組みます。どんなことができる蝶なのか、どこに住んでいるのかなど、担任からの助言をもとに特徴を話し合い、グループで相談して完成させていきます。描いた蝶の羽の前で写真を撮れば、まるで自分が蝶になったかのように大変身。専用アプリに取り込めば、空を羽ばたく仮想体験のはじまりです。自分や友達の蝶がスクリーンに現れると大興奮!!平面的に映し出されるのではなく、アプリならではの滑稽な動きにも大爆笑です。 こうして「実体験」を重視する本園ならではの活動をもとに、リアルな体験からの学びをバーチャルの世界に生かしたプログラムが完成しました。この活動を通して、子どもたちの好奇心や探求心が向上し、語彙力や表現力が豊かになりました。何よりも活動に取り組む子どもたちは表情が生き生きとし、言葉では言い表せないほど夢中になる姿が見受けられました。
本園では、これからも将来のための学びの基となる力を育む教育を実践し、「生涯学び続ける意欲的な人」を育てたいと思います。
帝塚山学院幼稚園では未就園児の皆さまに
本園の教育を体験していただけるイベントを開催しています。
各イベントの詳細につきましては下記リンクをご覧ください!